プロ野球のDHについて解説

野球

プロ野球で導入されているDHについて備忘録も兼ねて解説したいと思います。DHとは、野球の試合で投手に代わって攻撃時に打席に立つ選手を意味します。英語の略語「Designated Hitter」の頭文字をとってDHとスコアボードに表記されます。日本では指名打者と呼ばれています。

世界を見渡すとプロ野球でDHが導入されるのが主流になりつつあります。アメリカのMLB、日本のNPBのパ・リーグ、韓国のKBO、台湾のCPBL、キューバのセリエ・ナシオナル・デ・ベイスボルでDHが導入されています。他には独立リーグや社会人野球でもDH制度は採用されています。

WBCやプレミア12のような国際試合ではDHが導入されています。

※自分の配信でも本話題についてお話しました

DHの役割は投手の代わりに打席に立つ

DHの役割は投手に代わって打席に立つことです。DHは投手にしか適用がルール上できないことが関係しています。チームは必ずしもDHを使わなくても良いのですが、試合途中からDHを使うことはできません。1軍の試合でDHを使わないことはほぼありません。しかし、2軍の試合では怪我人の続出などで編成が困難な際にDHを使わない場合もあります。

試合中にDHを解除して、守備に就かせることは可能です。守備硬めで出していた選手が怪我をしてしまって控えの選手が残ってない時に稀に行われます。

1973年にMLBのア・リーグでDHが誕生した

1973年のMLBのア・リーグ(アメリカンリーグ)でDHがはじめて導入されました。過度なピッチャー有利な状態だったア・リーグでは、12球団のうち9球団の年間観客動員数が100万人を下回る状況でした。そこで商業的な目的のためにDH制度が導入されました。

NPBでDHはパ・リーグのみが導入している

2023年現在、NPBでDHを導入しているのはパ・リーグのみです。当時、人気低迷にあえいでいたパ・リーグが前述のア・リーグの事例を参考に1975年から導入しました。

【DHのメリット1】打線の攻撃力の低下を抑えることができる

DH導入のメリットとして考えられるのはピッチャーが打席に立つことが無くなるので、チームの打線の攻撃力が低下することを抑えることができる。DHが導入されていないセ・リーグでは投手が打席に立つことになるので、そこで打線が切れてしまうことが多々あります。実際、打順が投手に回る際はトイレに出かけたり、食事を買いに行かれている方も多いのではないでしょうか。

【DHのメリット2】投手の不要な怪我のリスクを回避できる

DH制度が導入されると投手が打席にたたなくて済むのでピッチャーは怪我をするリスクを回避することができます。打撃のために打席に立つと自打球や死球で怪我をするリスクが常につきまといます。走塁での全力疾走の際に肉離れを起こしてしまう可能性もあります。

【DHのメリット3】柔軟な選手起用が可能になる

「守備難だけど打撃は素晴らしい!」といった選手をDHで起用することが可能になるので、打線の組うための柔軟性が大きく増します。DHが無いセ・リーグでは試合にでるために、ある程度の守備をこなせる必要があります。しかしDHが使えるパ・リーグで守備難の選手にもチャンスを与えやすくなります。

DHだと選手の身体の負担を減らすことができます。例えば真夏の遠征時、主力の大砲をDHで起用することで打線を維持しつつ、守備を免除することで肉体の負担を減らすことができます。他には身体の状態があまりよくなくて「打撃は大丈夫だけど、守備は厳しい…」といった選手もDHならば起用することができます。

【DHのメリット4】若手を育成しやすくなる

DHが使えれば、1軍で打席を与えて育てて生きたい若手プロスペクトにも柔軟に打席をあたえることができるようになります。近年だと森友哉選手が良い例でした。埼玉西武ライオンズに在籍時、プロ入り直後は2軍で捕手として試合に出場して、1軍ではDHで打席を与えることでプロの球に慣れさせるといった育成をされてました。※埼玉西武ライオンズの場合、1軍と2軍が球場が目と鼻の先という立地条件もありましたが。

【DHのデメリット1】選手によってはDHが苦手

選手によってはDHだけだと調子が上がらない場合があります。守備でリズムを作って試合に入ってくことを好む選手も確かに存在します。そのため選手によっては守備時にベンチ裏で軽いダッシュを繰り返すことで、状態を上げていく工夫をする場合もあります。DHに打撃が良い選手をそのまま起用すればよいわけではないところもプロ野球の奥深さだと言えるでしょう。

【DHのデメリット2】資金力のあるチームが有利になる可能性がある

DHには長打力のある選手が起用されるケースが多々あります。このような選手は年俸の高い助っ人選手であるケースが多いので資金が潤滑のチームが有利になる傾向があります。

しかしながら本記事を執筆している2024年はMLBの最低年俸がアップしたのと、円安傾向なので本当に力のある助っ人選手はどの球団も簡単に獲得できなくなったことも付け加えておきます。

日本の大学野球では2リーグ以外ではDHが導入されている

日本の大学野球では東京六大学野球連盟と、関西大学野球連盟以外はDHが導入されています。両連盟ともに歴史がありますので、伝統を重んじているのでしょうか。他には神宮大会でもDHは採用されていません。

アメリカの高校・大学でもDHは浸透している。

アメリカでの高校・大学でもDHは浸透していますので日本とは大きく異なります。ピッチャーに専念する選手はPO(Pitcher Only)と呼ばれます。POになることで一切の打撃練習と、走塁練習をしなくなるので、自分の全ての時間をピッチャーとして成長するために使うことができます。打撃・走塁を無理にすることで怪我をするリスクを回避する意味合いもあるようです。

日本の高校野球では私学の強豪校ならまだしも、学校によって野球部の人数が試合をできるギリギリの場合もあるので簡単にアメリカの模倣ができない状況だと言えるでしょう。

MLBでは2020年からナ・リーグでもDHが導入されている

MLBでは2020年にはナ・リーグでも導入されました。これに伴いMLBの全ての試合はDH有りで開催されることになりました。ナ・リーグにDHが導入されたのは選手側からの要望が大きかった模様です。

大谷翔平選手の登場がDHのルールを変えてしまった!

ルールが変更されて先発投手とDHを兼務できるようにMLBではルールが変更されました。これは「大谷ルール」とも呼ばれて、MLBでピッチャーとバッターの両方で大活躍してる大谷選手のために作られたと言っても過言ではないでしょう。このルールでは先発投手として降板した後も、DHで打席に立ち続けることができます。NPBでも2023年から「大谷ルール」が適用されています。

セ・リーグでDHを導入するにしても準備期間は必要

ここからはあくまで筆者の考えですがNPBのセ・リーグでDHを導入するにしても、「来年から直ぐに!」といったのは難しいです。

もしもセ・リーグでDHが導入されていて、僕の好きな東京ヤクルトスワローズで考えるとしたらサンタナ選手が起用されるでしょう。そうなると空いた部分には本職のレフトの選手を補強することになるんじゃないかなぁ…と思います。

チームの編成方針にも大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。「はい、来年から!」って言われてもチームは困るでしょうし、レフトのレギュラーを育てる時間も欲しいでしょうし、ドラフトで獲得する選手の方針にも影響がでるでしょう。
仮にセ・リーグにDHを導入するにしても3年は準備期間が必要だとは思います。

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